公開日 2022年3月12日 最終更新日 2026年8月16日
マイホームの検討を始めると、多くのご家庭が最初につまずくのが「うちはいくらまで家にお金をかけていいの?」という問いです。この適正な住宅予算があいまいなまま話を進めるのは、目的地をナビに入れずに車を走らせるようなもの。そして、その適正な住宅予算を見極める最初のカギになるのが返済比率という考え方です。ここがあいまいだと、本来ワクワクするはずの家づくりが、ずっと心配のつきまとうものになってしまいます。
ここで知っておきたいのは、住宅予算には「銀行が貸してくれる額(借りられるお金)」と「あなたの家庭が無理なく返していける額(返せるお金)」という、まったく別の2つの見方があるということ。この2つを混同したまま予算を決めてしまうことが、住宅購入後の家計が苦しくなる典型的な原因です。
この記事では、住宅購入の資金計画を専門とするファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、後悔しない住宅予算の決め方を、2026年8月時点の最新データを使って解説します。

「借りられる額」で家を建てるか、「返せる額」で建てるかで、購入後の家計は大きく変わります(画像はイメージ)
1. 銀行から「借りられるお金」とは?
まず押さえておきたいのが、住宅会社の営業担当者や銀行が「これだけ借りられますよ」と提示してくる金額、いわゆる「借りられるお金」の正体です。
「返済比率」で借入可能額が決まる
住宅展示場や不動産会社で住宅ローンの相談をすると、営業担当者はまず「返済比率(返済負担率)」という物差しであなたの借入可能額を計算します。返済比率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合のことです。この数字が低いほど、ゆとりある返済ができるとされます。
150万円 ÷ 500万円 × 100 = 30% となります。
一般的な民間銀行では、年収に対する住宅ローン返済比率の上限を30%前後程度に設定しています。また、住宅金融支援機構の「フラット35」では、融資の条件として次のように返済比率の基準を明確にしています。
| 年収 | フラット35の返済比率の上限 |
|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 |
| 400万円以上 | 35%以下 |
この基準の範囲内であれば「融資できる」と判断されるわけです。
具体例:年収500万円で5,000万円を借りると?
たとえばAさん(年収500万円)が、土地建物を含めて5,000万円の住宅購入を検討しているとします。変動金利1.0%(※2026年8月時点の主要行の変動金利は年0.9〜1.2%台が中心)・35年返済で計算すると、月々の返済額はおよそ141,000円(年間約169万円)になります。
→ 銀行の融資条件(30%前後)の範囲内なので金融機関によっては「融資OK」のサインが出ます。
この「融資OK」が出た金額が、いわゆる「借りられるお金」です。審査では他にも勤続年数や信用情報など細かい条件が見られますが、ざっくり言えば「返済比率が基準内に収まっていれば貸せる」という判断で商談が進んでいきます。
「銀行のお墨付きがついた金額だから安心」——そう思いたくなりますが、果たして本当にそうでしょうか。
2. 「借りられる額」で住宅予算を決めてしまうリスク
ここが、住宅予算でもっとも多くの人が見落とすポイントです。
住宅費以外の支出は驚くほど多い
私たちの毎月の支出は、住宅費だけではありません。食費や日用品、水道光熱費といった生活費、衣服代、旅行や趣味などのイベント費用、保険料、そして何より子どもの教育費——住宅費以外にかかるお金は数えきれないほどあります。
返済比率が34%ということは、年収の3割強を住宅費だけで使ってしまうということ。ここに固定資産税や、戸建てなら将来の修繕費、マンションなら管理費・修繕積立金まで加わります。教育費が本格的にかかる時期と重なれば、家計はたちまち苦しくなります。
実際に住宅ローンを借りた人の返済比率は?
では、実際に住宅を取得した人たちは、年収の何割を返済にあてているのでしょうか。国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査」によると、住宅の種類別の返済負担率(世帯年収に占める年間返済額の割合)は、次のような結果になっています。
| 住まいの種類 | 世帯年収に占める年間返済額の割合(返済負担率) |
|---|---|
| 注文住宅 | 18.4% |
| 分譲戸建住宅 | 17.6% |
| 分譲マンション | 16.1% |
| 既存(中古)戸建住宅 | 16.3% |
| 既存(中古)マンション | 17.8% |
実際の返済負担率は、住宅の種類を問わずおおむね16〜18%台。これは、銀行の融資条件である「30%前後」と比べると、はるかに低い水準です。持ち家には住宅ローン返済額のほかに固定資産税や修繕費もかかるため、現実の住居費割合は上の数字より少し高くなりますが、それでも諸費用を含めた住居費全体で年収の30%にはまず届かないのが実態です。
住宅金融支援機構や各金融機関の調査でも、無理なく返せている世帯の多くは返済比率を年収の20〜25%程度、余裕を持つなら手取りの20%前後に抑えていることがわかっています。「収入の30%が住宅費の目安」とよく言われますが、統計から見ても生活実感から言っても、30%は高すぎるというのが正直なところです。
3. 実際に「返していけるお金」とは?
住宅を取得した後もお金に困らないために本当に大切なのは、あなたの家庭が無理なく「返していけるお金」がいくらなのかを正確に把握することです。
同じ年収でも、適正な住宅予算は家庭ごとに違う
ここで、年収500万円の2つの家庭を考えてみましょう。
| 家庭 | 家族構成 | 使えるお金の傾向 |
|---|---|---|
| Aさん家庭 | 子どもがいない夫婦2人 | 教育費がかからず、住宅費に回せる余力が大きい |
| Bさん家庭 | 子ども4人の6人家族 | 教育費・生活費が大きく、住宅費に回せる余力は小さい |
同じ年収500万円でも、教育費も日々の生活費もまったく違います。この2つの家庭が、同じ住宅予算をかけてよいはずがありません。「返していけるお金」は、それぞれのご家庭で違う——このことを知るのが、適正予算を考えるうえで何より大事なのです。
ひとつの目安は「返済比率22%以内」
ざっくりした目安としては、返済比率を22%以内(手取りベースならなお安心)に抑えることが挙げられます。ただし、これはあくまで一般的な目安にすぎません。
正確な「返していけるお金」を知るには、これから先のご家族の人生設計(ライフプラン)を立てる必要があります。お子さんの進学(公立か私立か、大学まで見据えるか)、車の買い替え、親の介護、老後資金——こうした将来の支出を一つひとつ書き出して初めて、「わが家が住宅にかけられる本当の金額」が見えてきます。
住宅予算は「人生の3大費用」から逆算する
適正な住宅予算を考えるとき、住宅費だけを単独で見てはいけません。人生には「住宅資金・教育資金・老後資金」という3大費用があり、住宅にお金をかけすぎると、後から来る教育費・老後資金を圧迫してしまうからです。
教育資金:子ども1人あたり約800万〜2,400万円
文部科学省の調査によると、幼稚園から大学卒業まですべて公立でも約803万円、すべて私立なら約2,355万円が子ども1人にかかります。「奨学金があるから」と考える方もいますが、奨学金の多くは借金であり、最終的に子ども自身が返済を背負います。教育資金は住宅予算とセットで見積もるべき大きな費用です。
老後資金:ゆとりある生活には3,000万円が一つの目安
総務省の家計調査では、定年退職後(65歳以上・無職世帯)の毎月の支出は平均約22.7万円で、年金だけでは月1.2万円ほどの赤字になるという結果が出ています。ゆとりある老後を送るには月36万円程度が必要ともいわれ、不足分を補うには老後資金として3,000万円ほどの備えが一つの目安になります。自営業だった方は厚生年金がないため、さらに多くの準備が必要です。
住宅予算は「土地・建物・諸費用」の3つで考える
住宅予算そのものも、土地・建物・諸費用の3つに分けて考えると全体像がつかめます。特に見落とされやすいのが諸費用(登記費用・仲介手数料・不動産取得税・ローン手数料など)で、物件価格の1割前後かかることもあります。この3つのバランス配分が、後悔しない家づくりを左右します。
ライフプランで「わが家の適正予算」を見える化する
3大費用の全体像がわかったら、次はライフプランで自分の家庭に落とし込みます。ライフプランとは、これからどんな人生を送りたいかを考え、それをもとにお金の流れをシミュレーションすることです。単なる資金計画と違い、結婚・出産・進学・退職といった人生の節目を織り込むため、「今いくらの家なら無理がないか」が具体的な数字で見えてきます。
人生100年時代だからこそ、長期の見通しが要る
日本人の平均寿命は延び続けており、2040年には男性83歳・女性89歳になると推定されています。住宅ローンの返済は数十年に及ぶため、老後まで見据えた長期のお金の流れを把握しておくことが、安心してマイホームを持つ前提になります。
購入タイミングで必要な資金は変わる
マイホーム購入のタイミングには、結婚前後・出産前後・子どもの就学前・子どもの独立後などがあります。どのタイミングで買うかによって、必要な資金も住宅ローンの組み方も変わります。ライフプランを作れば、購入の適切なタイミングと頭金の目安も自ずと見えてきます。
ライフプラン作成の流れ(収入と支出を整理する)
作成の第一歩は、将来の収入を見通すことです。今の年収が一生続くことはまれなので、勤務先の賃金規定や、国税庁「民間給与実態統計調査」の年齢別平均年収などを参考に、将来の収入カーブを描きます。次に、生活費・教育費・老後資金といった支出を時系列で並べ、収入と突き合わせます。こうして「いつ・いくら不足するか」が見えると、無理のない住宅予算の上限が定まります。
ボーナス返済に頼った資金計画は危険
毎月の返済額を抑えたいからと、ボーナス返済(ボーナス併用返済)を選ぶ方がいます。一見便利な仕組みですが、ボーナスを前提にした資金計画には大きなリスクが潜んでいます。
ボーナスは「確実に支給される」とは限らない
ボーナス返済は、契約時点の賞与額を前提に組まれることが多いですが、将来の賞与が保証されているわけではありません。景気悪化によるボーナスカット、転職、病気やケガによる休職などが起きると、ボーナス返済分が一気に家計を圧迫します。近年は金利上昇も重なり、ボーナス返済に頼った家庭が返済に苦しむケースが増えています。
積立で「住宅資金の余力」を別に作る
ボーナスは返済に組み込むのではなく、繰上返済用のプールや、新NISAなどの積立に回すのが安全です。こうしておけば、金利が上がったときの繰上返済や、想定外の支出への備えとして機能します。返済は「毎月の手取りだけで回る設計」にしておき、ボーナスは余力として温存するのが、失敗しない資金計画の基本です。
「わが家の適正予算」を知りたい方へ
「うちはいくらまで家にお金をかけていいのか」——この問いに正確に答えるには、ご家族のライフプランをもとにした予算診断が欠かせません。住宅購入の資金計画を専門とするFPが、中立の立場でご提案します。初回相談は無料です。
4. 「借りられる額」と「返せる額」で住宅予算はどれくらい違う?
ここまでの話を、年収500万円のご家庭を例に整理してみましょう。同じ年収でも、「借りられる額」で考えるか「返せる額」で考えるかで、住宅予算は大きく変わります。
| 考え方 | 返済比率の目安 | 年間返済額の目安 | 月々返済額の目安 |
|---|---|---|---|
| 借りられる額(銀行基準) | 約35% | 約175万円 | 約14.6万円 |
| 返せる額(安全ライン) | 20〜25% | 100〜125万円 | 約8.3〜10.4万円 |
※年収500万円で試算した概算です。実際は家族構成・ライフプラン・金利・頭金などにより変わります。
月々の返済で見ると、その差は4〜6万円にもなります。この差額こそ、教育費や老後資金、いざというときの備えに回せるお金です。「借りられるから」と上限いっぱいで組んでしまうと、この余力がまるごと住宅ローンに消えてしまうことになります。
5. よくある質問(FAQ)
Q. 住宅費は年収の何割までが目安ですか?
審査上は返済比率30%前後が上限とされますが、無理なく返し続けられる目安は年収の20〜25%程度、余裕を持つなら手取りの22%前後です。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査でも、実際に住宅ローンを利用している世帯の返済負担率はおおむね16〜18%台にとどまっています。「収入の30%まで」は生活実感からは高すぎると考えておくのが安全です。
Q. 「借りられる額」と「返せる額」は何が違うのですか?
「借りられる額」は、銀行が返済比率などの融資条件をもとに「貸せる」と判断する上限額です。一方「返せる額」は、あなたのご家庭が生活費・教育費・老後資金などをまかないながら、無理なく返し続けられる金額です。銀行は貸せるかどうかを見ているだけで、あなたの家計が幸せに回るかまでは見てくれません。この2つは必ず分けて考える必要があります。
Q. 同じ年収なら、住宅予算も同じでいいですか?
いいえ。同じ年収500万円でも、子どものいない夫婦と子ども4人の家庭では、教育費も生活費もまったく違います。使えるお金が違えば、住宅にかけられる金額も当然変わります。適正な予算は年収だけでは決まらず、家族構成と今後のライフプランによって一世帯ごとに異なります。
Q. 金利が上がると住宅予算はどう変わりますか?
金利が上がると、同じ返済額でも借りられる金額(=予算)は少なくなります。2026年8月時点では日銀の利上げにより政策金利が1.00%まで引き上げられ、変動金利も年0.9〜1.2%台が中心です。数年前の低金利の感覚やネットの古い試算のまま予算を考えると、実際の返済額とズレが生じます。必ず現時点の金利で試算することが大切です。
Q. 適正な住宅予算は自分で計算できますか?
返済比率の概算はご自身でも計算できますが、「わが家が本当に返していける額」を正確に出すには、教育費・車の買い替え・老後資金といった将来の支出を織り込んだライフプランの作成が必要です。中立の立場のFPに相談すると、住宅会社や銀行のポジションに左右されない予算診断を受けられます。
まとめ——住宅予算は「借りられる額」ではなく「返せる額」で決める
適正な住宅予算を考えるときの結論は、シンプルです。
| ポイント | 覚えておきたいこと |
|---|---|
| ①2つの予算を分ける | 「借りられるお金(銀行基準)」と「返せるお金(家計の安全ライン)」は別物 |
| ②返済比率の目安 | 審査は30%前後でも、安心ラインは20〜25%。実際の平均は16〜18%台 |
| ③3大費用で逆算 | 住宅・教育・老後をセットで見積もり、手取りの2〜3割に収める |
| ④予算は家庭ごとに違う | 同じ年収でも家族構成・ライフプランで返せる額は変わる |
| ⑤金利は必ず最新で試算 | 2026年は利上げ局面。古い低金利の感覚で予算を決めない |
マイホームは一生に一度の大きな買い物です。だからこそ、この先のご家族の人生設計を立て、それにかかる支出を見積もったうえで、支払い可能な住宅予算——つまり「返していけるお金」を知ることが、将来の成功への一番の近道になります。
「返済比率」だけを頼りに、安易にお任せで予算を決めてしまうと、うまくいくこともあれば、後々とても苦しい思いをすることもあります。予算選びで迷ったら、住宅会社でも銀行でもない中立の立場のFPに相談してみてください。エリアや土地の相場感については西宮市で一戸建てを購入する流れなども参考になります。あわせて正しい住宅購入の流れもご覧ください。
大阪・神戸・京都・奈良でマイホームをご検討の方へ
マイホーム購入の相談窓口では、ご家族一人ひとりのライフプラン作成と予算診断を行っています。住宅会社でもない、銀行でもない、中立な住宅専門ファイナンシャルプランナーだからこそ、ご家族の安心をずっと支えていきます。初回相談は無料です。

株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産購入相談をはじめとして、住宅予算診断、住宅ローンなど、第三者の立ち位置から顧客の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。



