公開日 2025年11月5日 最終更新日 2025年11月5日
住宅ローン固定金利の上昇 が注目される中、三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行が11月適用で10年固定 を引き上げました。
背景には、新発10年国債利回りなど長期金利の上振れがあり、固定型は市場金利の影響を受けやすい構造です。
一方、変動型は日銀の短期政策金利に連動するため目先は据え置きでも、家計は物価・管理費・修繕積立金など“非ローン費用”の上昇に直面します。
本記事では、長期金利が固定に波及する仕組み、失敗しやすい借入設計の共通点、固定・変動・ミックスの使い分けを実務目線で整理。
さらに「4,500万円・35年・変動0.8%」のストレステスト(+1%/+2%)で、毎月返済・5年後残高・出口リスクまで可視化します。
不確実な金利環境でも“今も将来も払える”設計づくりを、住宅専門FPとして具体的に解説します。
速報:主要行の動きと「住宅ローン固定金利の上昇 」の現在地
10年固定の改定状況と水準感
2025年11月、主要5行のうち三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行が10年固定を引き上げしました。
一方で他の大手行は10月の引き上げを経て据え置きが中心という報道整理になっています。
かんたんに言うと、「10年固定」=借りてから最初の10年間は金利が変わらないタイプです。
直近のニュースでは、主要行のうち一部の銀行がこの10年固定の金利を少し上げました。
理由は、国の長期金利(10年国債利回りなど)が上がったため。
固定金利はこの“長い金利”の影響を受けやすいからです。
この点について、わかりやすく解説していきます。
仕組み解説:なぜ住宅ローンの固定金利は上がるのか
長期金利(10年国債)との連動と期間プレミアム
住宅ローンの固定金利は、簡単に言うと「長期のものさし」=10年国債などの長期金利の動きに影響を受けます。
銀行は、長い期間お金を貸すほど
「この先のインフレや金利上昇が起きるかもしれない」
という不確実性を抱えるため、そのリスク分を上乗せして価格(=金利)を決めます。
これが期間プレミアムです。イメージは「10年間ずっと同じ定額プラン」に入る感じです。
将来の値上げや物価上昇の心配を銀行側が引き受ける代わりに、最初から少し高めの料金(固定金利)になります。
逆に言えば、将来の変動にビクビクしなくて済む「安心料」でもあります。
固定金利 ≒ 長期金利(10年国債や長期スワップ) + 銀行の上乗せ(事務コスト・信用リスク・利益 など)
→ 長期金利が上がると、固定金利もじわっと上がりやすい。
固定金利 ≒ 長期金利(10年国債や長期スワップ) + 銀行の上乗せ(事務コスト・信用リスク・利益 など)
→ 長期金利が上がると、固定金利もじわっと上がりやすい
3つのポイント✅
✅ポイント1:ニュースで「10年国債利回りが上昇」と聞いたら、固定金利は上がりやすい地合いと考える。
✅ポイント2:固定10年・固定15年・固定20年と期間が長いほど、期間プレミアムが効きやすい。
✅ポイント3:同じ長期金利でも、銀行ごとの「上乗せ(手数料方式・団信特約・優遇幅)」で表示金利は違う。
米金利・為替・リスク選好の伝播経路
日本の長期金利は、国内だけでなく世界の金利や為替の影響も受けます。ざっくり流れは次のとおりです。
・米国の長期金利が上がる(例:米10年国債)
世界の投資家は米国債の利回り上昇に反応し、各国の長期金利にも「上方向の圧力」がかかりやすくなります。
・円安が進む
輸入品の価格が上がりやすくなり、国内のインフレ期待が高まります。「今後しばらく物価が上がりそうだ」と見れば、長期金利は上がりやすくなります。
・リスク選好の変化(リスクオン/オフ)。
景気や地政学ニュースで投資家の心理が変わると、国債が売られ(価格↓利回り↑)たり買われたりして、長期金利が動きます。
米長期金利↑ → 世界の金利に上昇圧力 → 日本の長期金利↑ → 住宅ローンの固定金利↑
円安・物価上昇見通し↑ → 長期金利↑ → 固定金利↑
まとめると、固定金利は「世界の長い金利」や「インフレ期待」に敏感です。
ニュースで「米10年金利が上昇」「円安進行」「物価上振れ」といった見出しが続くときは、
固定金利が上がりやすいサインと覚えておくと判断が早くなります。
・長期金利:10年など長い期間のお金の貸し借りの指標。将来の物価や景気の見通しで動きやすい。
・期間プレミアム:長く固定で貸すほど不確実性が大きいので、金利に上乗せされる“安心料”。
・インフレ期待:「これから物価が上がりそう」という市場の見方。強いほど長期金利は上がりやすい。
実務のコツ:ニュースで長期金利や為替が動いたら、「固定:変動の配合」「繰上げ返済のタイミング」「借り換え可否」を見直す合図。
当記事のストレステスト(+1%/+2%)を自分の家計に当てはめ、固定比率や満了時期を調整しておくと安心です。
変動の据え置き背景(短期金利・政策動向)
11月の主要5行の最優遇・変動金利は横ばいでした。
報道では、代表的な最優遇の帯として三菱UFJ0.595%、りそな0.640%、三井住友信託0.730%、みずほ0.775%、三井住友0.925%が示されました。
「変動金利」=半年ごとに見直しがあるタイプです。
こちらは、日銀の短期的な政策金利と動きが連動しやすいのが特徴です。いまは政策金利が据え置き(10月30日に政策金利0.5%の維持を決めた)のため、多くの銀行で変動金利は横ばいになっています。
背景:
固定は“長い金利”に、変動は“短い金利”に影響されます。だから「固定は上がりやすい/変動は今は横ばい」という非対称な状態が起きています。
今後の変動金利返済における注意点と必要な行動とは?
変動でも、見直しのタイミング(半年ごと)や、銀行ごとのルール(例:5年ごとの返済額見直し)で、後から返済額が増えることがあります。「今は据え置き=ずっと安心」ではありません。
なお、三菱UFJの変動は11月掲示で年0.595%〜の帯を提示(ずーっと一律優遇コース例)。実行金利は属性・取引条件・商品タイプ(手数料型/上乗せ型)で動くため、店頭・公式ページの最新条件を必ず照合してください。
三菱UFJ銀行住宅ローン金利:
https://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/yuuguu/index.html
必要な行動:
自分のローンの次の見直し月を確認し、金利+1%/+2%の場合の月返済と5年後残高をあらかじめ試算。
無理が出るなら、固定とのミックスや繰上げの計画で備えましょう。
まとめ:
固定金利は上がり気味、変動金利は今は横ばい
この前提で、
・どちらをどれだけ持つか(ミックス比率)
・いつ・いくら繰上げするか(ルール)
を決めておけば、将来の金利変化にも振り回されにくくなります。
【要点】住宅ローンの固定金利上昇で家計はどう変わる?
結論:固定は上昇圧力、変動は据え置きでも“設計力”が命
今は固定金利に上昇圧力がかかり、変動金利は短期金利要因で当面横ばいという非対称な局面です。
家計に響くのは「表面金利の差」だけではありません。
物価・管理費・修繕積立金・保険料などの非ローン固定費の増加が同時進行しており、可処分所得の目減りが起きやすい点が本質です。
したがって鍵になるのは、金利の“当て”ではなく、どの金利環境でも暮らせる返済設計(設計力)です。
具体的には、以下の5つのチェックポイント✅が挙げられます。
✅判断軸は3つ
①返済比率=「手取りに対して毎月いくらまで返すのか」の目安
初めての方は、手取りの20~22%程度を上限にすると安全です。
例:手取りが月40万円なら、毎月返済は8〜9万円までが基本線。
ここに管理費や駐車場、保険、固定資産税など非ローン費用も上乗せされるため、余裕を残しましょう。
②生活防衛資金=「もしもの時に何か月暮らせるか」
目安は最低6か月分の生活費+予備費1〜2か月。
口座を分けて死守します。これを貯める前に頭金を入れ過ぎたり、繰上げ返済し過ぎるのはNG。
③出口自由度=「5年後に売る・住み替える時、困らないか」
5年後の残高と、想定売却価格(諸費用差引後)をならべ、売却代金−残債−諸費用がマイナスにならないかを確認。
残債が大きく残る設計は“引っ越したいのに動けないリスクになります。
✅ミックス設計が有効
・固定と変動の配合(例:6:4や5:5)は、心理面(安心感)と金利面(低コスト期待)のバランスを取りやすい方法です。
ポイントは固定の満了時期。
子どもの高校・大学入学など教育費ピークに固定の更新が重なると家計がブレやすいので、満了時期をずらす/期間を長短で組み合わせるなどの工夫をしましょう。
例:お子さまが10年後に高校入学予定 → 固定10年を避け、12〜15年固定や固定+変動の組み合わせを検討。
変動部分は「金利が+1%になったら繰上げ強化」などの運用ルールを先に決めておくと安心。
✅ストレステストを標準化
・契約前に「金利+1.0%/+2.0%」でも暮らせるかをシミュレーションで確認します。
当記事の実例(4,500万円・35年・変動0.8%)では、+1.0%で月+約2.1万円、+2.0%で月+約4.5万円の返済増。
5年後残高も約3,932万円 → 約4,017〜4,093万円と、金利が高いほど元本の減りが鈍くなります。
これを「家計の余剰」「重なり月(学費・車・保険更新)」「生活防衛資金」と突き合わせ、赤信号が出たら設計を見直すのが鉄則です。
✅繰上げ返済は“ルール化”
・まずは生活防衛資金(6か月+予備費)を守り、そのうえで年間の元本圧縮目標(例:年▲60〜100万円)を決めます。
方式は基本的に期間短縮が利息削減効果は大きめ。教育費増や転職の前後は無理をせず、イベントのない時期に実行するのが安全です。
✅ボーナス依存は最小化
・毎月返済は通常の手取りだけで完結させる設計に。ボーナスは使い切らず、繰上げ返済用のプールへ回すと家計が安定します。
ボーナス頼みの返済は、景気・育休・転職などの変化で簡単に崩れます。最初から「ボーナス返済ゼロ」を基本設計にしておくのが初心者にも安心です。
1) 手取りの20〜25%以内に月返済を抑える
2) 生活防衛資金6か月+予備費を死守
3) 5年後に動ける残債か確認
4) 固定×変動のミックス+満了時期の調整で“ブレにくい”設計に
5) 金利+1%/+2%でも暮らせるかを数字でチェック
6) ボーナスは頼らず、繰上げ用プールへ
家計インパクトの見取り図:金利だけでなく“非ローン費用”も増える
毎月キャッシュフローに効く4要素(管理費・修繕積立金・保険料・税金)
返済額だけを見ていると、家計がじわじわ苦しくなる理由に気づきにくいです。初心者の方は、次の4つの固定費も必ず並べて見ましょう。
① 管理費(マンション):共用部の清掃・設備保守などの費用。
・購入前に直近の改定履歴と今後の見通し(総会資料・理事会だより)を確認。
・駐車場・駐輪場は別料金のことが多く、空き状況で料金が変わるケースも。
② 修繕積立金(マンション)/維持修繕費(戸建て):建物を長持ちさせるための積立・修理費。
・マンションは長期修繕計画の将来カーブを確認。
・戸建ては10〜15年目に屋根・外壁・給湯器などのドンと来る修繕が想定されます(毎月の積立で平準化)。
③ 保険料(火災・地震・家財):更新タイミングで保険料が見直されることがあります。
・補償のダブり(家財・個人賠償・特約)をチェックし、ムダの削減を。
④ 税金(固定資産税・都市計画税):評価替えや新築減税の終了で負担が増えることがあります。
・購入時に翌年度の見込みと、減税終了後の金額も必ず試算。
・マンション:重要事項調査報告書/長期修繕計画/管理組合総会資料/管理規約
・戸建て:仕様書・保証書・点検スケジュール/外壁・屋根のメンテ周期表
・共通:火災保険見積り(複数社)/固定資産税の見込額(役所・売主資料)
→ これらを月額換算して1枚の家計表に並べるのがコツです。
固定費が1万円上がると貯蓄率はどれだけ落ちる?簡易シミュ例
固定費は1万円でも年間12万円。積み上がるとインパクト大です。
以下は初心者向けに、ざっくり感覚をつかむための例です(数字は例示)。
| モデル | 手取り 月収 | 毎月返済 (ローン) | その他固定費 | 毎月の 貯蓄額 | 貯蓄率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基準 | 40万円 | 9万円 | 25万円 (管理費・修繕・保険・税・通信・光熱ほか) | 6万円 | 15% |
| 固定費+1万円 | 40万円 | 9万円 | 26万円 | 5万円 | 12.5%(▲2.5pt) |
| 固定費+2万円 | 40万円 | 9万円 | 27万円 | 4万円 | 10%(▲5pt) |
ポイント:貯蓄率が2.5ポイント落ちると、生活防衛資金(6か月分)を貯め終えるまでの期間が数か月〜半年ほど延びることも。
毎月の貯蓄が1万円減る=年12万円の遅れ。繰上げ返済や投資に回す余力もその分縮みます。
① 管理費・修繕積立金:将来の改定予定を把握。改定が近いなら、家計の「余裕枠」を多めに取る。
② 保険料:補償のダブりを点検。地震・家財・個人賠償は内容と保険料のバランスを見直す。
③ 税金・光熱・通信:固定資産税の見込みを年間計画に反映。電力・通信はプラン見直しで月数千円の削減余地。
なお、住宅ローン固定金利の上昇 (固定の上振れ)と、上記の非ローン費用の増加は同時に起きやすいです。
だからこそ、購入前に「返済額+非ローン固定費」の合計で貯蓄率が10〜15%を維持できるかを確認。厳しければ、物件価格・ミックス設計・返済期間・頭金・保険見直しのいずれかで調整しましょう。
ストレステスト要点:4,500万円・35年・変動金利0.8%の結論だけ知る
月返済:+1%で約+2.1万円/+2%で約+4.5万円(家計の余剰で吸収できるか)
まずは「月いくら増えるのか」だけ押さえましょう。
前提条件:借入額4,500万円・35年返済・変動金利0.8%
金利が上がると毎月返済は次のように変わります(ボーナス返済なし)。
| 想定金利(年) | 毎月返済 | 0.8%からの増減 |
|---|---|---|
| 0.8%(現在水準イメージ) | 約122,900円 | — |
| 1.8%(+1.0%) | 約144,500円 | +約21,600円/月 |
| 2.8%(+2.0%) | 約168,200円 | +約45,300円/月 |
① 毎月の手取り − 生活必需費(食費・光熱・通信・交通・保育/学費など) − 非ローン固定費(管理費/修繕/保険/税)= 家計の余剰
② その余剰が、+2.1万円(+1%)や+4.5万円(+2%)をボーナス無しで賄えるか?
③ 目安:余剰 ≧ 1.5倍×増額なら「緑」/ 1.0〜1.5倍は「黄」/ <1.0倍は「赤(設計見直し)」
NG例:「今は払えるからOK」→ 先の固定費上昇(管理費・保険・税)やイベント月(車検・更新)が重なると破綻しやすい
コツ:ボーナスはカウントしない。毎月の手取りだけで増額分を吸収できる設計に
5年後残高:金利高いほど元本圧縮が鈍化→出口(売却・住み替え)の自由度低下
同じ5年を過ごしても、金利が高いほど元本が減りにくい=残債が多く残ります。
| 想定金利(年) | 5年後の残高目安 | 元本の減り方 |
|---|---|---|
| 0.8% | 約3,932万円 | 5年で約569万円圧縮 |
| 1.8% | 約4,017万円 | 圧縮ペースが鈍化 |
| 2.8% | 約4,093万円 | さらに鈍化(残債が多めに残る) |
① 見込み売却価格 ×(1 − 売却諸費用7%目安)= 手取り売却額
② 手取り売却額 − 5年後残高 がプラスなら動きやすい/マイナスなら追加資金が必要
例:5年後に4,200万円で売れる想定、諸費用7%→手取り約3,906万円。残高が4,017万円だと約111万円の不足。
ポイント:「今の返済が楽」でも、5年後残高が大きいと住み替え・賃貸化の選択肢が狭くなります
対策:固定と変動のミックス、固定満了時期を教育費ピークと重ねない、年次の繰上げ返済ルール化で“出口のしやすさ”を確保
・「月+2.1万円/+4.5万円」を自分の家計で吸収できるか、ボーナス抜きで確認する
・5年後残高と手取り売却額を並べ、赤字にならないかを一度シミュレーションする
迷ったら、当社のオンライン面談で家計表と一緒に数字で耐性チェックを行いましょう。
設計の結論:固定・変動・ミックスの最短ルール
基本:手取りの20〜25%内/生活防衛6か月+予備費を死守
まずは「いくらまで毎月返してよいか」の上限を決めます。金利や物件より前に、ここを固めるのが最短ルートです。
・返済比率=毎月返済 ÷ 手取り月収
・目安:20〜22%以内(単独収入や不安定な収入は18〜20%が安全)
・この「毎月返済」にはボーナス返済を含めない(=毎月の手取りだけで完結)
例1:手取り40万円 → 返済上限は8〜9万円
例2:手取り55万円(共働き) → 上限は11〜12.1万円
非ローン固定費も同時に計算:管理費・修繕・保険・固定資産税・通信・光熱などを月額化し、家計表に一列で並べる。
生活防衛資金: 生活費6か月分+予備費1〜2か月は別口座で死守。これが貯まるまでは繰上げ返済を急がない。
赤黄緑の簡易判定: 返済比率が〜22%=緑/22〜25%=黄/>25%=赤(設計縮小や期間見直しを検討)。
ミックス目安:変動50〜60%+固定10〜15年40〜50%(固定満了を教育費ピークと重ねない)
「固定 or 変動」ではなく、両方を混ぜるのが初心者には扱いやすい王道です。メリットは、心理(安心)と金利コスト(低さ)を平準化できること。
・変動50〜60% + 固定10〜15年40〜50%
・固定の満了時期を教育費ピーク(高1・大1)と重ねない
・変動パートには運用ルールを設定:金利が+1%なら繰上げ強化/+2%なら固定比率を再検討、など
タイプ別の最短ガイド
| 世帯タイプ | おすすめ配合 | 固定の期間目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 共働き・手取り安定 | 変動60%+固定40% | 10年 or 12〜15年 | 繰上げで変動リスクを管理。固定満了は教育費ピークを避ける。 |
| 子育て期が近い/単収入 | 変動50%+固定50% | 12〜15年中心 | 安心を厚めに。固定は更新時の家計イベントとズラす。 |
| 繰上げ積極派 | 変動70%+固定30% | 10年 | 年次繰上げをルール化(年▲60〜100万円)。余剰がぶれたら固定比率を戻す。 |
固定満了の置き方(時間割のコツ)
お子さまの予定(例:10年後=高校入学)に固定10年を直撃させない。→ 12〜15年固定で回避、または固定比率を少し増やす。
住宅・車・学費・保険更新・管理費改定の「重なり年」を避けるように固定満了を配置。
1) 手取りと家計表から、返済比率が20〜25%内に収まっている
2) 生活防衛資金6か月+予備費を別口座で確保
3) ミックス配合は変動50〜60%+固定40〜50%で叩き台を作った
4) 固定の満了時期が教育費ピークと重ならない
5) 変動は+1%/+2%時の行動(繰上げ・比率見直し)を事前にルール化した
最後に:ミックスは動的に調整できる設計です。家計の余剰や金利環境が変わったら、固定比率/期間/繰上げルールを年1回の点検で微調整しましょう。
「読めない金利」に賭けないで、どの金利でも暮らせる設計にしておきましょう。
借り換え・見直しフロー(90秒版)
動く基準:残存10年以上・実質金利差0.3%以上・諸費用回収5年以内なら検討
「借り換えたほうが得か?」は、次の3つだけ見ればOKです。むずかしい数式は不要、まずは一次判定を出しましょう。
① 残存期間が10年以上残っている(←効果が出やすい)
② 実質金利差が0.3%以上ある(現ローン金利 − 新ローン金利 − 手数料相当)
③ 諸費用の回収年数が5年以内に収まる見込み
実質金利差って?(かんたん式)
実質金利差 ≒(現金利 − 新金利) − 手数料換算
・定率手数料(例:2.2%)は重め。定額型(例:11万円)なら軽め
・がん団信など特約で新ローンの金利が上乗せされるなら、その分を差し引いて比較
回収年数 ≒ 諸費用 ÷ 年間の支払削減額
年間の支払削減額(概算)≒ 残高 × 金利差
(正確には元利均等の再計算が必要ですが、一次判定はこれでOK)
具体例(目安)
残高4,000万円・残28年・現1.6% → 新1.1%(差0.5%)・諸費用40万円
年間の支払削減 ≒ 4,000万×0.5%=20万円/年 → 2年で回収(◎ 検討価値あり)
同条件で差0.2%だと、年間 ≒ 8万円 → 5年で回収(△ ボーダー。手数料が重いと不利)
90秒でできる進め方(チェック→見積→決定)
数字を集める:現ローンの「残高・残年数・金利・商品タイプ(固定/変動)・団信」/借り換え候補の「金利・手数料(定率 or 定額)・保証料・団信」
一次判定:残存10年以上? 実質差0.3%以上? 回収≤5年? → 2つ以上YESなら次へ
簡易試算:候補A(同タイプ)/候補B(固定⇄変動)/候補C(ミックス)で、月の支払・総支払・5年後残高を比較
最終決定:家計の貯蓄率が上がる案/固定満了時期が教育費ピークと重ならない案を採用
諸費用の内訳(幅あり)
| 項目 | 目安 | メモ |
|---|---|---|
| 事務手数料 | 定額3〜11万円 / 定率2.2%など | 定率は重い=実質差を圧縮 |
| 保証料 | 0円〜数十万円 | 「手数料型」で代替の銀行もあり |
| 登記・司法書士 | 数万円〜十数万円 | 抹消+新規設定で発生 |
| 印紙税 | 数千〜数万円 | 金消契約で必要 |
| 団信特約差 | 0〜年0.1〜0.3%相当 | がん100%などは上乗せに注意 |
失敗しないポイント✅(短く3つ)
✅“総額で比較”:金利だけでなく、手数料・保証料・団信を含めた総支払額&回収年数を見る。
✅固定の満了時期:借り換えで教育費ピーク直前に満了が来ないよう、年限を微調整。
✅家計の余剰を先に作る:生活防衛資金(6か月+予備費)を死守。ボーナス頼みは避ける。
残存10年以上・実質差0.3%+・回収≤5年」なら、見積→本審査へ。
固定⇄変動の切替えは、固定満了のカレンダーと教育費ピークを見て最適化しましょう。
家計固定費の最小セット(非ローン費用を月額換算)
管理費/修繕積立金/保険/税金の4つを1枚の家計表に統合
住宅ローンの返済だけ見ていると、じわじわ効いてくる「非ローン費用」を見落としがちです。
まずは①管理費 ②修繕積立金(または戸建の維持修繕費) ③保険料 ④税金の4項目を、すべて月額にそろえて1枚の家計表にまとめましょう。
・年額のもの:年額 ÷ 12=月額(固定資産税など)
・数年分を一括払い:総額 ÷ 契約月数=月額(火災/地震保険、5年・10年一括など)
・将来の値上げ見込み:月額 ×(1+見込み%)を「将来欄」に置く(例:修繕積立+20%)
→ 「現在」と「将来(5年後)」の2列を作ると、家計の伸びが見えます。
資料の集め方(初心者でもできる)
・管理費/修繕積立金(マンション):重要事項調査報告書・管理規約・総会資料・長期修繕計画の「改定予定」を確認
・維持修繕費(戸建):建物の点検/保証書・メーカー推奨のメンテ周期表(屋根/外壁/給湯器など)から、年平均見込みを出す
・保険(火災・地震・家財):見積書または証券。一括払の総額と期間(月数)をメモ
・税金:固定資産税・都市計画税の課税明細(売主資料や役所の試算)。新築・軽減終了後の金額も確認
埋めるだけテンプレ(例数値・コピペOK)
| 項目 | 支払形態 | 現在の金額 | 月額換算 | 将来見込み(5年後) | メモ/根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 管理費 (マンション) | 毎月 | 8,000円/月 | 8,000円 | 8,800円(+10%) | 総会資料の改定方針より |
| 修繕積立金 (マンション) | 毎月 | 15,000円/月 | 15,000円/月 | 18,000円(+20%) | 長期修繕計画の改定表 |
| 維持修繕費 (戸建) | 年平均 | 180,000円/年 | 15,000円 | 18,000円(+20%) | 屋根・外壁・給湯器の年平均 |
| 火災・地震保険 (マンション) | 5年一括 | 100,000円/5年 | 1,670円 | 1,840円(+10%) | 証券:総額 ÷ 60か月 |
| 火災・地震保険 (戸建) | 5年一括 | 200,000円/5年 | 3,340円 | 1,840円(+10%) | 証券:総額 ÷ 60か月 |
| 固定資産税・都市計画税 | 年1回 | 120,000円/年 | 10,000円 | 13,000円(軽減終了後) | 課税明細・軽減終了後で試算 |
・マンション:管理費+修繕積立金をそのまま月額へ。改定予定を「将来欄」に反映
・戸建:管理費なし。代わりに維持修繕費(年平均)を設定。10〜15年目の大型出費(外壁/屋根/設備)を月で平準化
家計表に統合する目的(ここが重要)
返済比率の正確化:「ローン返済だけ」だと軽く見えます。非ローン4項目を足して、本当の毎月負担を把握。
貯蓄率の維持:現在と5年後の列を作ると、貯蓄率10〜15%を維持できるかが一目で分かる。
値上げショックの予防:将来欄を先に埋めておくと、改定が来ても家計が崩れにくい。
最短3ステップ(今日できる)
証券・明細・総会資料から「年額 or 総額・期間」を集める
すべて月額に変換(年額÷12/総額÷月数)
家計表に「現在」と「5年後」を並べ、返済比率20〜25%内・貯蓄率10〜15%が保てるか確認
非ローンの4項目を月額で1枚に集約 → 「現在」と「5年後」を並べて貯蓄率を確認。
厳しければ、物件価格・ミックス比率・返済期間・保険の見直しのどれかで調整しましょう。
短いQ&A|住宅ローン固定金利の上昇 編
Q.変動金利は今のまま低い?
→ A. 政策金利次第。半年〜5年ルールで後追い増額も
変動金利は短期の政策金利と連動します。今が低くても、将来の政策金利しだいで上がる可能性はあります。
さらに、変動は見直しタイミング(多くは半年ごと)や、商品で採用されがちな「5年ルール/125%ルール」(返済額は原則5年据え置き、見直し時の増額は元の125%までに制限)により、金利が先に上がっても返済額の増加が後から一気に来ることがあります。
※実施有無・条件は商品により異なります
金利が+1.0%になっても返済額は当面変わらず=利息が増えて元本の減りが鈍る→5年の見直し時にまとめて増額、という流れになりがち。
やること:自分のローンの「次の見直し月」と「増額ルール(5年・125%等)」を確認。
備え:金利+1%/+2%でも家計が回るかを試算し、ボーナス無しで吸収できる設計に。
Q. 固定は損? → A. 変動リスクを“保険料”で買う発想。睡眠コストも評価軸
固定金利は、将来の金利上昇リスクを銀行に移す対価(=保険料的な性質)です。
短期的な支払いは変動より高めでも、支払いが読める安心があります。
・単収入/子育て期が近い
・夜ぐっすり眠れるほうが重要
・家計の余剰が小さめ
変動がハマる人
・共働きで余剰が厚い
・繰上げを年次ルール化できる
・金利上昇時に素早く見直せる
判断のコツ:「総支払」だけでなく、ストレスの少なさ(睡眠コスト)と家計の余裕度も点数化。
折衷案:固定+変動のミックスで、安心とコストを平準化。
Q. ボーナス併用は? → A. 原則ゼロ設計。ボーナスは繰上げ用プールへ
ボーナスは景気・育休・転職でぶれやすく、返済の土台には不向きです。
毎月返済は通常の手取りだけで完結させ、ボーナスは①生活防衛の上積み → ②繰上げ返済プールの順で活用するのが安全です。
1) 毎月返済=手取り内で完結(ボーナスゼロ前提)
2) ボーナスはまず緊急資金へ(6か月+予備費)
3) 余ったら年1回の期間短縮型繰上げを実行(目安:年▲60〜100万円)
メリット:不測の収入変動でも家計が崩れにくい/総利息を計画的に削減できる。
注意:繰上げは防衛資金を守った上で。教育費ピーク前後は無理をしない。
最終チェック✅10(契約前にここだけ見る)
ここまで読んだら、あとは「見落としがないか」をチェックするだけです。
住宅取得が初めての方でも、この10項目だけ押さえておけば大きく失敗する確率は下げられます。
印刷してペンでチェックしてもOKです。
✅1.金利(固定・変動・期間)…「いまの金利」だけでなく、固定の期間と変動の見直しルールを確認。
担当者に「このコースの中で一番下がるものは?」と聞くと早いです。
✅2.手数料…「定額(数万円)」か「定率(借入の2.2%など)」かで総額が大きく変わります。
定率は長く借りると重くなるので、借り換え想定なら要注意。
✅3.保証料…「ゼロだけど手数料型」「一括払い」「金利上乗せ型」など銀行によって違います。
合計いくら払うのかを月額に直して家計表に入れましょう。
✅4.団信(がん・就業不能などの特約)…つけると安心ですが、金利が0.1〜0.3%上がることがあります。
入るなら「どこまでが必要最低限か」を決めてから。
✅5.返済比率…手取りの20〜22%以内におさまっているかを最後にチェック。
管理費・修繕・保険・税金を足しても苦しくないかを見ます。
✅6.生活防衛資金…「頭金を多く入れすぎて、貯金がほぼゼロ」になっていないか。
6か月分+予備費を別口座で残してから契約するのが基本です。
✅7.5年後残高…5年後にいくら残っているかをシミュレーションしておきます。
将来売る・住み替える・賃貸化する時に、残高が多すぎると動きにくくなります。
✅8.固定満了時期…固定10年・15年の「終わるタイミング」が、教育費ピークや車の買替えと重なっていないかを確認。
重なっていたら期間をずらすか、ミックス比率を変えます。
✅9.管理費・修繕計画・税金見込み…マンションなら総会資料・長期修繕計画を見て、5〜10年内にどれくらい上がるかを確認。
固定資産税も「軽減後の金額」を控えておきましょう。
✅10.繰上げルールと出口プラン…「年にいくら繰上げするか」「5年後に売るとしたら赤字にならないか」を決めておきます。
ルールが決まっていれば、金利が少し動いてもあわてません。
どれかが「わからない」「計算してない」なら、そこだけ先に数字を出してから進めましょう。
まとめ
“読めない金利”より“壊れにくい設計”——数字で耐性を確認し、迷えば専門家と最短ルートで設計
金利はプロでも完璧には読めません。だから「どの金利でも暮らせるようにしておく」ほうが、初心者には安全です。
今回お伝えしたのはそのための順番です。
① まず家計の上限を決める(手取りの20〜25%+生活防衛6か月)
② 固定・変動をミックスして、教育費ピークと重ねない
③ 金利+1%/+2%のストレステストで「本当に払えるか」を数字で見る
④ 非ローン費用(管理費・修繕・保険・税金)を月額で1枚にまとめる
⑤ 借り換えは「残存10年+0.3%差+5年回収」なら前向きに検討
これだけやっておけば、ニュースで「住宅ローン 固定金利 上昇」と出ても、家計がすぐに崩れることはありません。
あとはご家族の年齢・収入の形・買いたい物件の種類によって細部を整えるだけです。
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株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産や住宅予算診断、住宅ローンの専門家として、第三者的な立ち位置からのお金の専門家として、その後の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。



