公開日 2024年2月24日 最終更新日 2024年2月25日
中古マンション購入とリフォーム・リノベーションについて解説
昨今、物価上昇や原油高、半導体価格の資源不足による高騰などの影響で、新築のマンション価格が高騰しています。日本人の平均年収が長年にわたり伸び悩む一方で、このような新築価格の上昇は夢のマイホーム購入をあきらめる一つの大きな要因になりつつあります。
1年勤続者の年齢階層別給与所得者数・給与総額・平均給与(平成26年~令和4年)
引用:国税庁民間給与実態統計調査結果
上のグラフは国税庁の民間給与実態統計調査結果で、平成26年から令和4年までの30歳から34歳の平均給与の時系列データとなっております。
新築・中古問わず、新規で持ち家を購入する方(一次取得者層)の大部分を占める30歳代前半の平均年収はここ10年ほどの間で伸び悩んでいます。そして、驚くべきことに過去20年の間では減少傾向にあり、所得が減少する2007年以前に比べ、同世代にとって新築マンションを購入することの難しさを物語っています。
新築購入が年収的に難しくなる一方で、30歳前後の若年層を中心に中古マンションの購入が近年人気になりつつあります。
新築マンションを購入したいが、資金面を考慮して中古マンションを購入して自分好みの部屋に模様替えしたり、大きく間取りを変えてみたりと、家を自分なりにアレンジして愉しむような価値観に変化してきています。新型コロナウイルス感染拡大による営業活動の休止や外出自粛などの行動制限により、テレワークの推進によって在宅の時間が増えたことも、こうした「快適な家」への願望が高まった大きな要因といえます。
このように、中古マンションを購入し、リフォームやリノベーションを行うことで、新築よりも安価で自分たちのライフスタイルに合った快適な家に住む、というマイホームの取得方法に世の中の流れが少しずつ変わりつつあります。
中古マンション購入とリフォームやリノベーションが人気な一方でさまざまなトラブルも
中古マンション購入時のリフォームやリノベーションが人気な一方で、工事後に家に住みはじめてから、設備などに不具合が発覚したり、曖昧な契約内容にもかかわらず進めた結果、トラブルが起きていたり、さまざまな問題も実際に起こり始めています。
中古マンションを購入しリフォームやリノベーションを行う際の疑問やお悩み
また、中古マンション購入し、リフォームやリノベーションをしようと検討している皆さんの中には、以下のような疑問やお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
- リフォームとリノベーションの違いは?
- リフォームやリノベーションって具体的にどのようなことをするの?
- リフォームやリノベーションの費用はどれぐらいかかるの?
- 中古マンションを購入してどのタイミングでリフォームやリノベーションをすべき?
- 中古マンション購入時のリフォームやリノベーションに活用できる補助金があるの?
- 中古マンション購入時のリフォームやリノベーションに住宅ローンは利用できるの?
- リフォームやリノベーション工事の業者選びのポイントは?
そこで、今回の記事では2章に分けて中古マンション購入と、その流れで行われるリフォームとリノベーションの違いや可能な工事範囲、費用の相場、活用しやすい補助金(助成金)制度の例、ローン選び、業者選びのポイントなどについて解説していきます。
第1章ではリフォーム・リノベーションの違いや可能な工事範囲について解説していきます。
誰もが安心して中古マンション購入時にリフォーム・リノベーションを実現できるように、様々な疑問点なども解消し、後悔や失敗のないマイホーム購入を目指しましょう。
家を買う今後の主流に?中古マンション購入とリフォームやリノベーション
リフォーム・リノベーション工事が前提の物件購入は購入者全体の約4割強に
2022年度 住宅リフォーム事業者実態調査報告書 2023年2月を株式会社Erwinが編集
引用:一般社団法人住宅リフォーム推進委員会
上のグラフは全国の一般社団法人住宅リフォームの事業者を対象に取られたアンケートです。(調査時期:2022年7月14日~8月22日)有効回答数:1,272サンプル(郵送:638サンプルインターネット:634サンプル)
「居住用物件の売買時におけるリフォーム・リノベーションの割合」について上のグラフの通り全体の42%を占め、新築の価格高騰もあり、この割合は年々増加傾向にあります。(*この統計は一戸建ても含めています)
2022年に近畿圏で取引された中古マンションのうち、約7割が築16年以上の物件
2022年中古マンションの築年帯別成約状況[近畿圏]
引用:公益社団法人近畿圏不動産流通機構
公益社団法人近畿圏不動産流通機構の調査によると、近畿圏で2022年に成約した中古マンションのうち、全体の71.6%が築16年以上の物件となっています。築36年以上の物件にいたっては、全体の28.1%を占めており、中古マンション購入後に大小関わらずリフォームやリノベーション工事が行われていることが想定されます。
中古物件のストックが市場に流通する量も年々増加していることを考えると、今後は建築年数の古い物件の増加によるリフォーム・リノベーション市場の拡大は容易に想像できます。
リフォームとリノベーションの違いとは?
中古のマンション購入を検討し、実際に物件を内覧した際に、建物の状態に合わせて以下のような要望が生じるかと思います。
- キッチンを対面型に変えたい
- お風呂を一新したい
- フローリングを張り替えたい
- 和室を洋室に変更したい
- 壁紙の色を自分の好みに変えたい
- 今の間取りをより快適な間取りに変更したい
こうした要望は、リフォームなどで内装の一部を工事したり、リノベーションすることによって叶えることができます。
リフォーム(reform)で老朽化した建物の内装の一部をより使いやすく
内装の一部分の工事を行い利便性を高める工事をリフォームといい、新しく自分たちのライフスタイル合うように間取りから大規模に変える内装工事をリノベーションといわれています。詳しく定義を説明すると以下の通りです。
リフォーム(reform)は現状の老朽化した建物の内装の一部を新しく快適な状態に戻し、より使いやすくすることです。
リノベーション(renovation)でこれまでにない新しい空間を生み出す
リノベーション(renovation)は改革や刷新という意味をもち、建物の内外装を新しくするだけでなく、これまでの間取りにも手を加え、今までとは違った新しいコンセプトを作り出し、新たな価値観をプラスするものです。
まとめますと、リフォームは部分的に傷んだ箇所を改修して新築の状態に戻す工事、リノベーションは大がかりな改修によってこれまでにない新しい空間を生み出す工事、という定義になります。
中古マンション購入後のリフォーム・リノベーションの工事範囲はどこまで可能?
中古マンション購入後のリフォームやリノベーション工事はどこまで可能なのでしょうか?分譲マンションで生活していくうえで様々なルールがあり、リフォームやリノベーション工事を行うために、まずはそうしたルールを知っておく必要があります。
分譲マンションのルールブック「管理規約」とは?
分譲マンションの1室ごとの所有者を「区分所有者」と呼びます。
分譲マンションには区分所有者の権利や義務などが定められた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」が存在します。
そして区分所有法では、それぞれのマンションに応じた管理規約を区分所有者によって定めることを義務付けています。
また、区分所有者は必ず管理組合に加入しなければなりません。
管理組合は区分所有者の資産価値をしっかりと管理して守る義務があり、そのための様々なルールが定められています。
このルールが管理規約です。分譲マンションでリフォームやリノベーション工事を検討する場合には、「管理規約」に違反していないか必ず事前に確認しておきましょう。
リフォームのルールは使用細則に規定されている
分譲マンションで区分所有者が共同して生活を送るうえで、管理規約よりもさらに詳細なルールを定めたものが「使用細則」です。「使用細則」は管理規約とともに作成されるのが一般的で、専有部分のリフォームやリノベーション工事に関するルールなども詳細に規定されています。
細かい禁止事項なども「使用細則」に定められているため、禁止されている工事をしないためにも必ず事前に確認をしておくべきでしょう。
マンションには専有部分と共用部分がある
マンションには専有部分と共用部分が存在します。
専有部分とは、玄関の内側からサッシの内側までの部分を指し、コンクリートの壁・床・天井・柱の内側の内装部分や設備などが専有部分にあたります。
一方、共用部分とは、マンションを支えている構造躯体(くたい)であるコンクリートの壁や床、天井、柱などをはじめ、共同で使用する廊下やエレベーターなどがあたります。
専有部分は区分所有者が許可を得てリフォームやリノベーション工事を行うことが可能
このうち、マンションの所有者である個人がリフォームやリノベーションをできる範囲は、専有部分に限ります。コンクリートの面の内側であれば新しくリニューアルすることができますので、間取りなどの変更なども可能です。
そして、実際に工事を行う場合は、管理組合にどのような工事をいつするのかを、あらかじめ申請したうえで行う必要があります。
共用部分は区分所有者全員のものなので区分所有者がリフォームやリノベーション工事を行うことはできない
構造躯体であるコンクリート造の壁やスラブ床、天井、柱などの共用部をはじめ、サッシやドア、バルコニー、玄関ポーチ、室外機置場、メーターボックスなどの共用部の専有使用部についてはリフォームやリノベーションをすることはできません。
ただし、玄関ドアの内側の仕上げは変更可能で、サッシのガラスや鍵についてもマンションによっては変更できる場合があります。管理組合の規約を確認してみましょう。
マンションのリフォーム・リノベーションの大前提は、コンクリート造の壁や柱、梁(はり)、床や天井などは金具を打ち込んだり、削ったりはできないという点に注意してください。
主な専有部分と共用部分の工事可能範囲は以下のイラストの通りです。
①キッチンの入れ替え・・・〇専有部分の内装設備工事であることから入れ替え工事が可能。
②ドアの交換・・・✖入口ドアは共用部分にあたり、交換等はすることができない 。⋆1 ⋆2
③窓やサッシの交換・・・✖共用部分で交換は基本的にできないため、断熱や遮音はインナーサッシでの対応となる。
④外壁の工事・・・✖建物の構造躯体である外壁には穴を開けたりすることはできない。
⑤内部の壁を無くす・・・〇部屋内部の壁は構造躯体(コンクリート)でなければ取り払うことが可能。
⑥お風呂の入れ替え・・・〇お風呂の入れ替えは内装の設備工事にあたり可能。トイレも同様。
⑦フローリングの貼り換え・・・〇フローリングの貼り換えは基本的に可能。マンションによって制約がある場合も。⋆3
⑧バルコニー工事・・・✖バルコニーは共用部分にあたるが、専用使用することは可能だが、マンション全体の持ち物なので工事は不可能。
*1 玄関ドアの内側の仕上げは変更可能(塗り替えやシート張りなど)
*2 部屋内部のドアは修繕や交換などが可能
*3 マンションの管理規約で床材の防音性能の仕様が決まっているため要確認
まとめ
このように、中古マンション購入時のリフォームやリノベーション工事は、専有部分については工事が可能ですが、共用部分は原則できません。
ただし、マンションによっては、専有部分であっても管理規約に独自のルールが定められている場合もあるため、管理規約や使用細則をあらかじめ確認しておきましょう。
また、中古マンション購入時にリフォームやリノベーション工事を行うための予算取りは、あらかじめ押さえておくべき重要なポイントとなります。
よくある失敗事例として、中古マンション購入の予算だけを気にするあまり、結果としてリフォームやリノベーション工事で予算オーバーしてしまった・・・ということがよく起こりえます。
購入前に何にどれぐらいの予算が掛かり、将来的にしっかりと返済していくことが可能なのか?予算バランスをあらかじめ意識しながら家の購入を進めていきましょう。
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マイホームという人生で1番大きな買い物をする場合、住宅予算の不安や失敗を失くすにはどのような流れがベストなのでしょう?
答えは、まず最初に物件探しや見学をするのではなく、住宅予算や不動産の専門家である不動産専門のファイナンシャルプランナー(FP)に相談することが将来的な資金の不安を解消する鍵となります。不動産購入や予算診断、ライフプラン作成のプロに将来における住宅費用の返済について相談をするとずっと付きまとう不安を解消することが可能です。
マイホーム購入の相談窓口では、中古マンションの購入を検討したい方向けに初回無料相談を実施しておりますのでご利用ください。
株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産や住宅予算診断、住宅ローンの専門家として、第三者的な立ち位置からのお金の専門家として、その後の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。